のぶろぐ | スペインで野球ときどきベースボール

サッカーの国スペインのバレンシアで野球をしながらスペインの日常を記す冒険の書(2020年3月に日本に帰国)

野球を続ける理由~自分が1番嫌いなこと③~

野球を続ける理由~自分が1番嫌いなこと②~の続き

 

2年間のエルサルバドルでの活動が終わり、日本へ帰国した。

帰国の翌年から東京で働くことになった。

当時千葉県に住んでいた。

仕事に慣れてきたころ、家の前の野球用具店に「すみません。少し前にこっちに引っ越してきたんですけど、この辺で野球に関われるところってありませんか?選手でも指導者でもどっちでもいいので...」とお願いをしたところ、いろんなところに聞いてくれて、指導者としてチームを紹介された。

そして仕事が休みの日にはボランティアで中学生の年代の野球チームのコーチをさせてもらった。

その地域に全くかかわりがなく、見ず知らずの自分をチーム全員で温かく迎えてくれた。

 

大学時代やエルサルバドルでの野球の経験を踏まえて、「1人の甲子園球児より、100人の野球が大好きな子ども達を育てる」ことを自分の中で決めて練習を手伝った。

 

子ども達はとてもうまくて技術的には言うことがないくらいレベルが高い。

でもスタッフや親御さんからは、求められるレベルが高く毎日怒鳴られたり日本の体育会特有の理不尽なことに耐えたりすることも多くて中には苦しそうな子もいた。スタッフの中で自分が一番子ども達の年齢に近かったので、コーチというより子ども達の兄弟のような立場で関わろうと考えていた。

 

意味のない理不尽に必死に耐える子ども達をみて、「お前のせいで負けた」とか「戦犯」とかそういう言葉と無縁の所で野球をしてほしいと思った。

 

そういう思いでチームを手伝っていたので、怒ったり怒鳴ったりは一切しなかった。

怒鳴ってる人の言葉は人の心に届かないから。

 

だけど一度だけ子ども達に注意と相談したことがある。

 

それはある日の練習試合きっかけ。

相手チームのピッチャーが女の子だった。

野球やっている女の子は少ない。しかもピッチャーとなると中学生の年代だと意識しないほうが難しいと思う。

 

でもその日のベンチでの応援に問題を感じた。

子ども達が自チームのバッターへの応援で「手加減してやれよー」「ピッチャー返しすんなよー」と茶化すような応援をしていた。空振りした時も「手加減してんのかーハハハ」と笑う。

その子が打席に立った時も「打たせてやれよー」など悲しくなるような言葉が飛び交っていた。

そのうえスタッフも自チームの選手がアウトになってベンチに戻ってくると「お前あの子の胸とかお尻とか見てるからじゃねーのか!」とか「見惚れてるからアウトになってやったんだろ?」などと言う始末。

 

一緒にベンチにいてこんなに恥ずかしことはなかった。

恥ずかしすぎて、いつも帽子のつばに乗せるだけのサングラスを試合が終わるまでつけっぱなしにした。

案の定、子ども達の応援やスタッフの言動を審判の方から注意を受けた。

 

試合も負けた。

試合後に自分一人で相手チームの女の子の所に行って謝罪をした。

そして少しでもこういうところ変えていくから自信をもって野球を続けてほしい。本当にナイスピッチングだったよ!と伝えた。

 

移動して解散前のミーティング。

首脳陣は誰もこのことについて触れなかった。

 

自分の話す番になった。

自分は注意したり悪いところ指摘したりするのがすごい苦手だからギリギリまで言うかどうか迷った。

でも小さい声で子ども達に伝えた。

 

「俺はいつも勝っても負けても全力で取り組めば全然オッケーって言ってるよね。でも今日はオッケーって言うことできない。なんでか分かる?

今日の試合で相手チームのピッチャーは女の子だったけど、今日のみんなの応援は応援じゃない。間違いなくあれはセクハラ。人としてやってはいけないこと。

女の子は野球やっちゃいけないっていうルールはないよね?

もしあの女の子が男の子と本気で真剣勝負したくて野球やってたらどうする?

もしそうだったとしたら、今日のみんなはあの子の気持ちをめちゃくちゃに踏みにじったと思うよ。

みんなが思うより大きな問題だってことを分かってほしい。

性別とかお金持ちとか貧乏とか、上手いとか下手とかって関係ないはずだよ!

俺も大学時代、マウンドで相手ベンチに笑われたり馬鹿にするような態度をとられた時が一番嫌だった。

今日のみんなの態度をあの子はずっと忘れないと思う。

だから二度とこんなことはしないでほしい。

野球に限らず生まれ持ったものをけなしたり馬鹿にしたり、そういうことはもうしないでほしい。

人の痛みが分かる人になろう!」

 

こう伝えた。

もちろん子ども達に理解してほしかったのもあるんだけど、年齢が20個30個離れた首脳陣に対しても伝えたかった。

それを相手の嫌なこととか触れられたくないことって気づかないで他人を傷つけることってすごく多いから。(自分も含めてね)

 

強く注意したのは手伝ったチームを手伝った1年間でこの時だけ。

特に子ども達はまだ「知らないだけ」。

どういうことがいけないことか。

どういうことが人を傷つけるのか。

こういうことを教えていくのが大切なことだと思う。

 

①の記事でも書いたけど「その人の力でどうしようもないことを嘲笑う」ことが嫌いな自分にとってこの出来事はどうしても放っておけなかった。

 

性別、人種、生まれの環境、貧富の格差、外見、性格...

先天的なこと。自分の力ではどうすることもできないこと。

こんなことで人間の優劣なんて絶対に決まらない。

自分はそう思う。

 

自分が野球を通じて学んだことは技術やうまさではなく、へたな人の気持ちや立場の弱い人達の気持ちを理解してあげることの大切さだったんじゃないかなって感じる。

 

今、野球を通じて日本やエルサルバドル、スペインで生活して様々な文化や、いろんな経歴を持つ人に触れてきた自分だからこそ伝えられることがあるんじゃないかって最近は思う。

 

自分は日本が大好きだけど、もっとより良くしていかないといけない問題がたくさんある。

外国人労働者に対しての対応、社会的弱者への差別や偏見、男尊女卑文化、パワハラやセクハラ、理不尽なことの強要、いじめ。

正しいことより人気のあることが大事にされる今日。

素人だから詳しいことは分からないけど、少しずつでも変わっていかないといけないと思う。

 

ある青年海外協力隊経験者の方がこんなことを言っていた。

親としてはもちろんのこと、大人として、この地球に生きる先輩として、子ども達の将来を守っていくのは私たち大人である。より住みやすい環境を整え、平和で安心して暮らしていける世の中を作り、後世に残さなければならない。

 

自分はまだまだ経験が少ないし、何も残してきていないけど、このために自分ができることを自分なりに続けていきたい。もちろん楽しみながら!

 

長くなったけど少しまとめると、

世の中にはどうしようもないことがいっぱいある。

変えたくても変えられないものもいっぱいある。

でも先天的に決まっていることやその時にその人の力でどうしようもないことをいじったり馬鹿にしたり嘲笑うようなことが一番嫌い。

そしてそういうことで傷ついたり悲しんだりしてる人たちに「大丈夫だよ」って言ってあげられるように、不器用で何のとりえもないコンプレックスだらけの自分は、自分ができることに挑戦することで、そういう強さを身に着けていきたい。

 

自分にできることなんてホントにホントに小さい。

でもたった一滴の水が大河に変わることもある。

 

 

ずるい奴が笑う世界で、少しずつでも物事が良い方向へ進むために。

 

以上。

 

最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。

 

 

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