野球を続ける理由~自分が1番嫌いなこと②~
野球を続ける理由~自分が1番嫌いなこと①~の続き
そんなこんなで大学卒業後、新卒で青年海外協力隊として中米のエルサルバドルに派遣された。
エルサルバドルでは主に2つの活動をした。
・首都の野球チームで子ども達への技術指導
・地方の小学校を巡回し、体育の時間に野球のクラスを行う
実際、エルサルバドルの野球レベルは高く、ドミニカ共和国やパナマなどからコーチを呼び技術指導が行われてる。一応プロリーグもある。
しかし地方へ行くと野球を見たことも聞いたこともない人が多かったため、自分は地方巡回の活動をメインに行った。
エルサルバドルという国は治安があまり良くなく、ギャングや麻薬などの問題も蔓延っている。(興味のある方はぜひ調べてみてください)
それらの問題に子ども達が巻き込まれ、将来を台無しにしてしまうことも少なくない。
野球を通じて子ども達の未来を守る環境をつくることを大切にしたかった。
そういう現状がある中で活動中大切にしたこと。
「誰にでもヒーローになれるチャンスを与えること」。
・打った後バット置きゾーンにバットを置ければたとえアウトになっても+1点
・誰でも必ず一度はバッティングできる機会を与えること
・試合後には勝ち負け関係なく、チームのために頑張っていた子をヒーローに認定し表彰すること
・先生方に相手チームの頑張っていた子を探してもらい、プロタゴニスタ(主人公)として褒めてもらうこと
これらのことを特に大切にして活動を行った。
なぜか。
この国では生まれた時の家庭環境でその後の可能性が決まってしまっていることが多く、チャンスに恵まれない子がたくさんいる。
だけどそのことで自分たちの未来を諦めてほしくなかった。
誰でも活躍できるチャンスや場所を作ることで、生まれながらに決まってしまうことを自分たちの力で変えていけることに気付いてほしかった。
生まれた時の貧しさ、それは誰かと比べるものじゃないし、生まれた時の貧しい環境でみんなの未来は絶対に決まらない!
これだけは本気で伝えたかった。
野球をやるのに性別、国籍、人種、貧乏、金持ち、言語は関係ない。
すべて自分次第っていうことを伝えたかった。
生まれた環境でみんなの未来は決まらない。
そういう変えられないことを馬鹿にしてくる奴らがいっぱいいる中でも、俺はみんなのことを応援してるから。
それだけは分かってほしかったし、自分との活動の中で実感してほしかった。
地方での野球普及活動ができたのは8カ月くらいだけだったけど、150人くらいの子どもたちが毎回クラスに参加してくれるようになった。
その中にはクラスが終わって学校が終わった後に居残りで練習する子もいた。その子と話をしていると、なかなか厳しい家庭環境の中で生活していることを知った。その子と一緒に少しでも未来を変えるために一緒に戦いたいって思った。
ずっと居残り練習を続けたおかげでその子は誰より自分のことを理解してくれたし誰よりもうまくなった。
自慢の教え子。
最後の活動が終わったときに、クラスをしていた別の学校の一人の女の子がお父さんを連れて自分のところに来た。
そしてその子のお父さんが、
「あなたが娘に野球を教えてくれた日本人の方ですね!娘がいつもあなたのことや日本のこと、野球のクラスのことを家で話してくれるんですよ!以前は家で学校のことなんか話すことなんてなかったのに、最近はあなたのクラスが楽しみって言ってます。娘の楽しそうに話をするのを私たちも楽しみにしています!本当にこの国に来てくれて、そして娘に野球を教えてくれてありがとう!」
と言ってくれた。
エルサルバドルで子ども達と野球ができて本当に良かったと思えた瞬間だった。
活動がうまくいかず、途中で帰国してしまおうか悩んだ時期もあったけど、この一言で全部報われた気がした。
実際、開発途上や発展途上といわれる国々では教育や医療など直接生活に関わることが求められる。最悪スポーツなんてしなくたって生きていけるから。
そんな中スポーツや野球を通じて子ども達に何が残せるか。
「野球してる時って楽しいな!」
「今日もヒーローになるぞ!」
「今日こそボールを怖がらないで捕るぞ!」
日本と比べて厳しい生活環境にいる彼らにスポーツや野球を通じて「生きがい」を提供することが大切なことの一つじゃないかなって思う。
誰かの役に立ちたいって思って青年海外協力隊へ参加を決めた当時の夢が叶った瞬間だった。
子ども達が必ずこの国をより良い方向に導いてくれると思う。
いつか世界を変える力になる。
野球を続ける理由~自分が1番嫌いなこと③~へ続く
※エルサルバドルの現地の様子については別の記事で詳しく紹介します。